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 ティーンのみなさんへ院長


 ティーンエイジ。いいですね。僕のような年齢になってもあの頃を思い出すと懐かしさに胸がいっぱいになります。人の一生の中で、最も輝かしく、希望に満ち、幸せな時期ですね。僕自身のティーンエイジ時代、僕の子供達(今、30才前後)のティーンエイジ時代、それぞれ時代により色々異なる点はありますが、今現在ティーンエイジを迎えている皆さんは今までになく難しい時代にティーンエイジを送っているように思います。

 この年代は、生物学的に見ると、子供から大人への移行期に相当し、女性の場合、月経の発来など、近い将来母親になれる身体がほぼ完成します。 

 しかしながら、人生を乗り切ってゆくに必要な知識、経験は足りませんし、判断力もまだまだ未熟ですから、思わぬアクシデントでつまずく事の多い年頃です。この時期は性ホルモンが豊富に分泌されます。そしてティーンエイジを取り巻く環境は、テレビ、雑誌などマスメデイアからの過剰な、時には誤った性情報にあふれています。さらに決定的に昔と違うのは、パソコンのインターネットや携帯電話の出会い系サイトなどの刺激的な世界に誰でも入れることでしょう。それらの結果、ともすれば、本能の命ずるままの性行動に走る傾向が見られます。こうした無防備な性行動の代償として、望まない妊娠とか、性感染症といった大きなダメージを受ける危険性が高まります。

 僕の医院にも、17、8才で中絶手術を受ける患者さんや、性感染症の治療に通う若い女性がいて、もしも僕の娘だったらと思うと、暗い気持ちになることがあります。

 望んでいなかった妊娠をしてしまった場合、一部の人たちは、人生設計を不本意ながら変更(学業の中断など)して出産を選び、残る大多数の人々は人工妊娠中絶に走ります。統計によると、わが国の中絶数は全体としては年々減少する中で、唯一、十代の中絶だけが増加しています。中絶は健康への悪影響も勿論ですが、物心両面で重荷を背負う事になるものですから、極力避けなければなりません。そのためには、できればセックスを避ける(はっきりノーと意思表示できる習慣を身につける)か、少なくとも避妊の正確な知識と、きちんと実行できる強い意志を養う事が大切です。当然ながら男性側の協力、配慮の必要な事は言うまでもありません。

 他方、性感染症に関しては、最近の調査では、クラミジアをはじめ性器ヘルペス、コンジローマなど性感染症の罹患率が、テイーンエイジャーでも急上昇している事が明らかとなっています。こうした感染症の治療が遅れると、健康を損なう事は勿論、将来不妊症の原因になる事もあります。

 特に、いまだに決定的な治療法が確立されず、発見されてから僅か20年そこそこで全世界に4000万人以上といわれる感染者を生み出したエイズは、日本でも着実に増加し、2003年1月の時点で9000人以上の患者、感染者が報告されています。しかもクラミジアなどの性感染症に罹患している人では、エイズ感染のリスクが2〜5倍に増えるといわれています。ですから、性感染症にかからないよう注意(不特定多数とのセックスをしない、コンドームの使用など)し、万一、感染の恐れがある場合は、症状はなくてもなるべく早く受診し、必要に応じきちんとした治療を受けることが大切です。

 ともすると、エイズは別世界の病気、という感覚でいる人が多いのが日本の現実ですが、実はごく身近にあって、しかもまったく日常的なセックスでも感染する、という事を決して忘れてはなりません。今のペースで増えれば、近い将来感染爆発が起こるという番組がNHKで放送されたのを見た方もいるでしょう。あの番組でも、自分達がエイズに感染しているなどとは夢にも思っていない若い夫婦が赤ちゃんを産んで、その赤ちゃんがエイズだったことから自分達の感染を知るという悲劇的なケースが紹介されていました。出会ったその日のうちにセックスをしてしまうというような風潮が当たり前のようになってきた日本では決して人事ではありません。しかも、男性感染者は20〜30歳代を中心に50歳代まで幅があるのに対して、女性はその75%が10代、20代の若い層に集中しています。

 将来幸福な家庭を築き、社会的には、次代を担う立場にあるテイーンエイジャーにとって、さまざまな欲望を適宜コントロールし得る事は、心身ともに成熟した大人になるために、何よりも必要な事ではないでしょうか。

 このページを開いてくれた皆さんが、正しい知識をもって行動してくれる事を望みます。何か相談したいことがあったら、どうぞ産婦人科のドアをノックしてください。

院長 保倉 孟