卵巣腫瘍
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卵巣とは?

卵巣は子宮の左右に2つある、親指の頭ほどの楕円形をした小さな臓器ですが、小さいながらも女性の一生に深くかかわる臓器です。それは、卵巣には女性にとって大切な働きがあるからです。

卵巣からは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2つの女性ホルモンが分泌され、生理を起こし妊娠を成立させたり、女性の体を女性らしくしてくれるという働きがあります。また、卵巣には赤ちゃんのもとになる卵をつくるという大切な働きがあります。女性は生まれた時から卵巣の中に、原始卵胞と呼ばれる、赤ちゃんの卵のもとになる細胞を数百万個も持っていて、これが周期的に成熟して放出されるのです。これが排卵です。


卵巣は腫瘍ができやすい?

一年ほど前、宇多田ヒカルさんが19歳で卵巣腫瘍の手術を受けたことが話題となり、若い女性の中にはショックを受けた人も多かったと思います。

卵巣は、思春期を過ぎると、女性ホルモンを分泌し周期的に卵子を育て、排卵するというリズムを繰り返します。その働きは大変微妙でデリケートですが、実は卵巣は女性の体の中で最も腫瘍が出来やすい臓器といわれており、人体の中で最もいろんな種類の腫瘍ができやすいことが知られています。しかも小児から老年まで年齢を問わず発生するのが特徴です。

その上、特殊な場合を除き、病気がかなり進行するまで自覚症状が現れにくく、このため発見しても手遅れになりやすい、厄介な病気です。


どんな腫瘍があるの?

大別すると、さわると軟らかいタイプの嚢胞性腫瘍と硬いこぶのようになる充実性腫瘍とに分けられます。



嚢胞性腫瘍(ゴム風船のような袋状の腫瘍)卵巣腫瘍の80〜85%を占める。嚢胞性腫瘍は、柔らかくぶよぶよした感じのことが多く、内容物によっておよそ次のように分けられます。殆どは良性腫瘍です。

・嚢腫(さらさらした漿液や、ねばねばした粘液など液体だけが入っているもの)
・皮様嚢腫(どろどろした脂肪、毛髪、骨などが詰まっているもの)
・チョコレート嚢種(子宮内膜症が卵巣内部にあり、ここからの出血が少しずつ溜まったもの、内容物が溶かしたチョコレートに似ている)



充実性腫瘍(中味がつまった硬いこぶ状の腫瘍)卵巣腫瘍の15〜20%を占める。6〜7割は悪性です。


症状は?

腫瘍が小さい間は、良性、悪性とも自覚症状のない場合が多く、このため沈黙の腫瘍とも言われますが、成長しかなり大きくなると、症状が現れます。

次のような症状に気づいたら、早めに受診しましょう。
・周囲の臓器を圧迫して頻尿や便秘、下腹部痛や腰痛がでてくる。
・おなかが大きくなる。(悪性腫瘍では腹水がたまる。)
・下腹部やわき腹にしこりが触れる

ただ、腫瘍の大きさにかかわらず、茎捻転と言って、卵巣腫瘍を支える靭帯と卵管の部分で捻じれると、強い痛みや吐き気が出て、緊急手術が必要となります。


診断するには?

症状が出てからでは遅いので、定期的な検診が必要です。ただし、通常の婦人科的診察(内診)だけでは、腫瘍がある程度以上に大きくならないと発見できないことも多く、早期診断には超音波検査(特に経膣)が必須です。またCTやMRI検査は腫瘍の種類や、周囲臓器との位置関係などを確かめるのに役立ちます。更に、腫瘍によっては血液などで腫瘍マーカーを測定することも有用です。

ただし、子宮などと異なり、直接組織を採取して検査をすることはできにくいので、どんな腫瘍かの最終的な診断は、手術で摘出した腫瘍の組織検査で決まります。


治療は?

良性腫瘍の場合、大きさが6〜7cm以下だと年2、3回の定期的検査で経過をみますが(茎捻転をおこしたばあいは緊急手術が必要)、それ以上の大きさになると手術が必要です。手術は腫瘍部分だけを摘出する場合(若く、妊娠希望の人)と、卵巣全体をとる場合があります。最近は、腹腔鏡(内視鏡の一種)による手術も可能になりました。この方法だと女性にとって気になる手術の傷も小さくてすみ、卵巣は技術的にも最も安全に内視鏡手術ができる腫瘍の一つとされています。

ただし悪性が疑われる場合は、腫瘍の大きさに関係なくなるべく早く開腹手術をすべきです。
ごく初期の場合、卵巣だけを摘出するだけのこともありますが、多くは両側の卵巣だけでなく、子宮や周囲のリンパ節まですべて摘出します。
さらに、悪性度が高かったり、転移がある場合は抗がん剤(化学療法)や放射線療法を併用することもあります。





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